山内若菜氏二人展<事務所代表 森のfacebookより転載>
※事務所代表 森のfacebookより転載
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昨日、銀座の画廊でお会いした画家・山内若菜氏の二人展を参観した。
梅雨いりし早朝からの小雨が肌寒い。会場は「港の見える丘公園」側の岩崎ミュージアムである。
港の見える丘公園へ向かうのは、数年前の神奈川近代文学館へ太宰治展を参観していらいだ。
岩崎ミュージアムの地下展示会場へ入るなり、山内氏の作品「山」「海」が会場壁面に広がり、中央に宮崎氏の人形が立ち尽くしている。舞台正面には「大地」と「海」の少女が卒然と立ち、中央の人形と呼応しているのだ。
この空間は何処なのか、何時なのか、何が居るのか、何故という問いが幾重にも重なり、私を覆った。
ここに広がる空間は、深海の底のように無音であり、肌を突き抜ける冷気と濃密な哀しみが満ちている。
宮崎氏は阪神大震災に揺り起こされ存在の孤独を抱えた人形を生み、東日本大震災そして福島の悲劇に共振した山内氏の筆は地に満ちた哀しみを壁面にすくいあげている。
世紀末ウイーンに現れた画家エゴン・シーレへの二人の共感が、共鳴し二人の祈りとなりこの空間にレクイエムを奏でているのだ。
私は立ち尽くしかなかった。
二階の会場には、山内氏の作品が壁面に並び宮崎氏の人形がテーブルへ座り込んでいる。
山内氏が描いた時間を失った少女達と、シーレの少女を空間に引き出した宮崎氏の作品の存在感は会場に不思議な立体感を与えていた。
午後のオープニングでは、地下会場で藤村俊介氏のチェロ独奏が披露された。チェロの響きは深海の静けさを穏やかに揺蕩い、会場を祈りに満ちた安らぎの空間へと誘うようだった。
演奏終了後、山内氏は即興で描いたスケッチを藤村氏へプレゼントした。
驚きと笑いに包まれた会場は、少し温まったように感じていた。
是非、ご参観いただければと思う。
「NUDA VERITSU 2019・宮崎郁子+山内若菜」展
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<スタッフ後記>
自分の居る場所が分からなくなるほど無音の空間は、他には無い濃密なものだと思われます。
チェロの響きがもたらしてくれた安らぎの中で、いつまでも参観していたくなりますね。