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箱根の向こう(6)ポーラ美術館の裏庭<事務所代表 森のfacebookより転載>

Date:2019/05/05

※事務所代表 森のfacebookより転

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ラリック美術館から車で暫く走り、坂道の雑木林を抜けるとポーラ美術館が突然現れる。

雑木林は標高が少し高いのだろうか、正門まで歩く道が肌寒い。

淡い薄紅の山桜が、葉を落とした雑木林に春を告げていた。

 

「印象派の風景」展が開催されていた。

この美術館は所蔵作品も多く、毎回訪れるのが楽しみだ。

佐伯祐三の「下落合風景」という作品がある。

この美術館の所蔵なのだが、作品を実際に見たことはない。以前訪れた折にミュージアムショップでポストカードを見つけた。

何故だか引かれて購入した。

しばらく本棚に立てかけていたのだが、ある日気がついた。

子供の頃の原風景なのだ。

幼いころ福岡の国鉄筑肥線のすぐ脇に住んでいた。単線で便数も多くなく、黒く汚れた枕木と長く続く線路を渡り、親も知らない小山に登り遊んでいた。そこで振り返った赤土の風景に似ているのだ。訪ねるたびに楽しみにしているのだがいまだ出会えてはいない。

ゴッホの「ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋」があざやかなプロバンスの乾いた光を切り取っている。ポール・ゴーガン「小屋の前の犬、タヒチ」、所蔵作品のピカソ青の時代「酒場の二人の女」。そして、パリの古めいた建物の懐かしさを描いた佐伯祐三「アンドレ・ドリュード・シャトー」が心に残っている。

 

ポーラ美術館にもう一つの楽しみがある。

美術館から雑木林へ遊歩道がのびている。ここは季節ごとに変わる空気が心地いい。

木々の枝には枯葉がいくつかしがみ付くばかりで、日差しが透き通っている。遊歩道の枕木に寒々と影が長々と伸びている。

小さなすみれの紫だけが春のさきがけだった。

 

渓谷への無人の歩道には

冬枯れた竹林がざわめいていた。

 

ポーラ美術館

https://www.polamuseum.or.jp/

 

 

 

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<スタッフ後記>

「ああ、いいなあ」と思った景色が、実は幼い頃に訪れた場所と同じような景色だと気付いたとき、不思議な縁を感じずにはいられません。

自分でも気付かないうちに、自分を形作っている情景なのでしょうか。