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哲学の道から(完)西田幾多郎記念哲学館<事務所代表 森のfacebookより転載>

Date:2019/03/24

※事務所代表 森のfacebookより転

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兼六園沿いの道を下り、金沢から和倉の加賀屋へ向かった。等伯忌の前日、等伯会の方々との懇親会が加賀屋で行われる。毎年の行事でもあり、懐かし方々とお会いするのが楽しみな会でもある。

この日、安部は京都の仕事場から加賀屋へ早く入り部屋で執筆する。懇親会までの時間も、かさなった締切りに余裕などない。

部屋付きの中居さんから私の到着の連絡が入ったのか、安部から連絡があった。一息入れたとこだったらしく、珈琲を飲んでいた。

明日の等伯忌法要の後東京に戻るが、私は途中の宇野気で「西田幾多郎記念哲学館」立ち寄って帰るつもりだというと、「俺も行く」と予期せぬ返事が返ってきた。締切りの心配をすると、早起きして仕事するから何とかなるという。

等伯忌法要後、等伯会の大林会長に車を手配していただき宇野気へ向かった。

駐車場からエレベーターを昇れば、真直ぐな側道がエントランスへ伸びている。

コンクリートとガラスの碧が起立して、遥かな存在が砂丘の上に座っている。安藤忠雄氏の設計の妙が広がっている。

参観しながら、思いつく言葉をお互いに拾っていく。展示された作品や写真を追い、二人で無言のままモニターから流れる映像を見ていた。

安部が「どう思う?」
「深いね」と私が答えた。

しばらく無言のままモニターを見ていると、唐突に

「西田幾多郎を描いてみようか?」
「幾多郎の何を描くの?」
「とてつもない不幸を抱え込み、それでも真剣に立ち向かいながら何とも言えない可笑しみを失わない大哲学者の人生」そう言って笑った。

執筆の時期は見当もつかない。抱えた課題は10年分ありその間の何処かで書くことになる。だが、楽しみな作品になるだろう。

安部が地下にある「空の庭」では両手を広ひろげ、展望ラウンジで照れながら座った。

二人とも還暦を越えた今も、十五のまま変わりはしない。

それは何気ない一言から始まり、そして唐突に走り始めるのだ。

いつもの事である。

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<スタッフ後記>

安部と森とのやりとりからは、いつも爽やかな青春の匂いがしてきます。

いくつになってもこのような関係性を続けられる友人を持つことが、

私の夢であります。