大渡橋<事務所代表 森のfacebookより転載>
※事務所代表 森のfacebookより転載
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先日の雪の日、散歩の帰り道に思い出した風景がある。
四十年以上昔の話だ。
上京したばかりの私は、仕事に街の生活に慣れないまま漂っていた。
仕事休みの冬の午後、神保町の古本屋外へ向かった。
学生時代に好きだった萩原朔太郎詩集を買い込んで、喫茶店へもぐりこんだ。
郷土望景詩「大渡橋」を開くと、学生時代に一度訪れた前橋の大渡橋と利根川の広い河原とが風景が浮かんだ。
その後の記憶は飛んでしまったが、行くあてもなかった私は確かに、
その日の夕方、雪の大渡橋を歩いていた。
ただ音もなく降る雪の中、この詩を口ずさみ堤防を一人歩いた記憶がある。
凛とした言葉が若い情熱にあふれ、行く道に迷う青年の心情が重なったのかもしれない。
裏表紙にあった鉛筆書きの380円という値が掠れている。
大渡橋
ここに長き橋の架したるは
かのさびしき惣社の村より 直ちよくとして前橋の町に通ずるならん。
われここを渡りて荒寥たる情緒の過ぐるを知れり
往くものは荷物を積み車に馬を曳きたり
・・・・
往ゆくものは荷物を積みて馬を曳き
このすべて寒き日の 平野の空は暮れんとす。
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<スタッフ後記>
今の若者で、全集を買って読み切るという経験をしている人は少ないのではないでしょうか。
先日も思いましたが、今の時代は娯楽が多すぎるものの、感性自体はどんどん褪せていってしまっている気がしてなりません。