長崎の再会に(4)<事務所代表 森のfacebookより転載>
※事務所代表 森のfacebookより転載
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坂道に戻り少し歩けば、まだ新しい赤レンガの道へ出る。
黄色のコスモスが掌を大きく広げるように咲いている。住宅街への道のようだ。
小道も尽きて戻り道、南山手レストハウス脇から延びる石畳の坂に、先ほど見かけた猫が私を待っていた。
私は後を追うように石段を登り、レストハウスの上に出た。
屋根の向こうに長崎の海が見える。
さらに先には使い古された小道沿いにブロックの壁が続く。
捨てられ荒れ果てた宅地の跡が空を広くしている。
突然、突き当りの家から郵便配達の制服が飛び出し、私の脇を駆け降りてゆく。
小道の先にも人の住処があるのだ。
突き当りから左に折れると古い石段が、さらに上に伸びている。
この先は天国へ続く階段に思えてきた。
石段の尽きる踊り場は、両脇の玄関の前に座っている。
確かに人の気配がただよっていた。
大浦天主堂よりはるかに天国に近い場所ではあるのだろうが、不便を楽しみとして生きる外ない聖地である。
この聖地に信仰を持たぬ者の居場所はない。
下り進む石段は、降りるたびに思い出の小石をポケットに忍ばせてくれる。
安部と取材チームに合流する雲仙へ向かう。
長崎駅前のバスターミナルに人影もまばらだ。
小雨は上がってはいる。
だが、ときおり吹き抜ける風は台風の気配を漂わせていた。
-続く-
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<スタッフ後記>
森の切り取り方が上手いのか。はたまたこの土地の魅力がそうさせるのか。
映画の中にいるような感覚を覚えます。
高低差がある中で、森の運動量にも脱帽です。