長崎の再会に(3)<事務所代表 森のfacebookより転載>
※事務所代表 森のfacebookより転載
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祈念坂を左に折れると視界が広がる。
大浦展望公園の標柱があり、面前には色とりどりの住処が山々を覆っている。
長崎は山と海の街なのだ。
赤レンガで敷き詰められた公園のベンチに座り、鞄を下ろし汗を拭く。風は凪いで雲ばかりが急いでいた。
先客の猫が私に挨拶する。どうも縄張りを侵略したのが気に入らぬらしい。
何度か声をあげていたが、諦めたかベンチの端に座ったまま真直ぐに山の向こうの空に視線を移した。
猫と二人、旅先の時の流れを雲にまかせてたたずんだ。
背後に広々とした庭と歴史を感じる佇まいの洋館があった。ここも背丈ほどの石垣の上に広がっている。庭の手入れをされている方に声をかけた。
『南山手レストハウスです。ご自由にご見学ください』と、花壇の作業の手を止めてにこやかに振り返っていただいた。
長崎港を見下ろす庭園と、グラバー邸と同時期の建てられた石壁の洋館である。表門からは大浦天主堂と長崎港が重なる美しい景色が見渡せるとあったが、庭先に出て遠望するが小雨に曇って霧の中である。
足元の展望台を見下ろすと、見知らぬ猫が数匹たむろしている。
先ほどの相席した猫の姿は消えていた。
-続く-
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<スタッフ後記>
写真からは、まるでジブリ映画の中に入り込んでしまったかのような感覚を覚えます。
世界遺産として有名なグラバー邸。同時期に建てられたこの建物もまた、
歴史的価値を感じさせます。