京都散策2 華厳寺・鈴虫寺
※事務所代表 森のfacebookより転載
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1月6日 京都散策(2) 華厳時・鈴虫寺
大鳥居の前で目礼し、華厳時へ向かった。懐かしさが漂う街並みを歩けば、凍えた体が丸くなる。普段着けなれない手袋を取り出した。俯きかげんに歩けばアスファルトが寒々とする。突然、大きな犬が吠えた。マフラーに埋もれた顔をあげて、垣根の向こうを観れば虚ろな自分が見上げている。
情けない姿に鞄を置き、大きく伸びをして腕をまわす。
初詣の道は老いの道ではない。そう思い笑った。
山からの小川に橋が掛かり、脇に「すず虫寺」と簡素な看板が立っていた。ここを登るのだと思い振り返ると、小さなカフェがあった。香りに誘われ落ち着いた空気に暫し暖をとった。
護岸整備された小川には山から清水がながれ、冬枯れた川底を見つめるサギが静かに足を下ろしている。
少し先の橋を右に上れば「鈴虫の寺・華厳禅寺」と石塔があり、天敵の階段が登っている。
遥か上の門前には、数十人ほどの参拝客が並んでいた。ここで退去というわけにもいかず、階段を寒椿に見とれつつ踏みしめていった。
ほどなく門前から参拝客が下りてくる。若い方が跳ねるように降りていく傍ら、膝が悪い老齢の方には辛い階段ではあるだろう。まわりで手を貸しては、石段を踏んでゆく。ただ、口元には微笑みが薄く残っていた。
正門から本堂に上がれば、整然と並んだテーブルには緑茶と菓子が用意されて参拝者を招じ入れる設えがあった。広々とした本堂には二百人以上が座布団の幅に収まる。
鈴虫がこの世の春かのように鳴き、住職のお説教がレコーダーのように唐突に始まる。
落としどころ満載のお話の先には、菓子の話があった。紅白の落雁に黒いゴマの様な粒が練り込まれているが、これは生ける物に感謝すべく鈴虫の足を練り込んで・・いるわけもなく、紫蘇を風味に練り込んでいると語る。微かに笑いが人いきれに紛れたように思えた。
膝が曲がらぬ小生には、座布団一枚の世界に足が悲鳴をあげて足の指が攣る。指を伸す蹲踞の構えのまま、ご住職の声は聞こえず鈴虫の合唱に天井を仰いでいた。
華厳寺の庭から望む京都の空には、いまだ小雨を抱えた雲が浮かんでいる。
階段を降り右手に曲がり地蔵院へ向かう小道、先ほど気付かなかった竹林の隧道に光が見えた。
小川の橋を渡り衣笠山の途中、地蔵院はその先にある。
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【スタッフ後記】
最近階段を上ってばかりいる気がするのは気のせいでしょうか?
私も正座が苦手なので、読んでいるだけで足がなんだかかゆくなってきました。
住職のお説教。他のお話も気になります。