京都散策(終) 衣笠山 地蔵院
※事務所代表 森のfacebookより転載
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1月6日 京都散策(終)衣笠山 地蔵院(えりゅうざん じぞういん)
小道を抜けると、バスの停留所があり数台の市営バスが待機していた。鈴虫寺や苔寺の人気がなせる技かどうかは知らぬが、時間待ちの乗客が並び楽し気な声が聞こえる。向いには鄙びた蕎麦屋が二件ほどあった。昔風のガラス窓の引き戸の奥に客はいない。奥から満面の笑みをたたえた嘗ての看板娘が引き戸を開けて手招きしている。投網にかかった身を観念し、空腹を満たすには十分な蕎麦をいただいた。
地蔵院への看板が石段の脇に立ち、恨めし気に見上げたが坂上の空が明るく何かしら期待できる気がして足を運ぶ。登り切り苔むす小道を進むと、住宅脇の私道の先に薄雲が広がる京都の町並みが眼下にあった。
地蔵院の事前の知識は持ち合わせてはいない。竹の寺という名に引かれただけだった。門前に立つまで一休禅師ゆかりの寺とは知る由もない。
門より参道を進めば、苔を従えた竹林が続く。冬にも関わらず潤いをたたえた空気がたゆたっている。
本堂の両脇に広がる苔庭は、豊かな緑をたたえ閑静な空間と竹の囁きに答えている。
さらに本堂を右に進めば、苔の参道が地蔵院方丈へ導いている。
方丈には先客の女性がお二人、紅い毛氈の端に座り囁き声がこぼれていた。残念ながら撮影は禁止とあった。
疲れた足を伸ばし、枯山水の冬枯れた庭には、常緑の深い碧が苔を際立たせている。紅葉の色づく騒がしさが枝先にいくつかとどまっている。
思いと共に心に写し、惚けて観ていた。
時間を忘れた。
風が吹き抜けると、庭先の枝が揺れ日差しが揺れた。薄雲が流れ去り、陽の温かみが膝に纏いつく。
気が付けば方丈に一人。
丸まった背中を両手で伸ばし、体中で息を大きく膨らませた。
方丈を出て見上げれば空が明るく、足元の石段が濡れながら光っていた。
苔の参道を進めば、本殿脇の苔の庭が輝き始めている。竹の参道を経て門前から振り返れば、いまだ明るい西日は、靄がかる竹林に明るい影を作っていた。
思い出深い京都の散策となった。
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【スタッフ後記】
調べてみるとこの地蔵院、幼少期にあの一休さんが過ごしたとされるお寺とのこと。
一休さんとお母さまとを模った石像もあるといいます。
いつか訪れてみたいです。