ジャコメッティ再訪
※事務所代表 森のfacebookより転載
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先週私用で出かけた折、再訪したいと思っていた東京新美術館ジャコメッティ展へ訪れた。
平日の閉館まで時間がないのにも関わらず会場は人であふれていた。
先回気になっていた幾つかの作品をもう一度確認したかった。
「鼻」という長い鼻が特徴の作品。横から見ると鼻だけが長くデフォルメした姿に違和感を持つ。
だが、長い鼻を真正面に見ると長い鼻は消え、遠近感を失った鼻と顔が微妙に揺れながら、見る者の視界の中で存在の危うさを感じさせる。
そして、「犬」と「猫」である。横から見る骨格には、肉体をそぎ落とされ存在だけを残している。
だが、真正面から対峙した途端、猫の丸い顔の遥か向こうに尻尾が遠近を失い揺れながら、「猫」が、そして「犬」が確かに息づいている。
モンパルナスのアトリエ近くのカフェで、通りを眺め時に新聞にスケッチを書き込む姿は、孤独と狂気を漂わせているようだ。乾いたパリの空の下、忘我の先に彼は何を見ているのだろうか。
作品を鑑賞する人々は腕をくみながら見あげ、時にかがみ込む。
あたかも鏡に写る自らの姿をのぞき込むように。再訪した会場を振り返った時、なぜジャコメッティに孤独と共に懐かしさを感じるのか、その理由を見つけたような気がした。
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【スタッフ後記】
以前の記事の際にも感じましたが、ジャコメッティの作品はとても静かで、そして恐ろしい。
見た目の不気味さ以外にも、見ていると何か訴えかけてくるものがある。
生き物の真の姿を見せられてるような気持ちになります。