閑清寺から<事務所代表 森のfacebookより転載>
※事務所代表 森のfacebookより転載
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先月末の奈良・平城宮でのイベントの翌日、少し時間ができた。
京都から山科に向かい、山のはざまを走る道路から少し登ると見えて来る寺がある。
清閑寺である。
車を降りてすぐの階段を上り、高倉天皇陵をへて空に続く階段がある。
山門の背後には薄曇りの空が広がり、天界に向かう寂しげな関所のようだ。
小督局の供養塔が苔みちた庭にすわる。早朝の小雨にぬれた庭の木々には、色づきを待つ固い芽があるばかりだ。
庭奥から望む京の都は、遠く靄にかすみ鄙びた山寺の静寂が心地よい。
山門を越え階段から見下ろせば、こちらへ向かう人影が見えた。
跳ねるように登りくる少年の顔が、杣道に春風を運んで来るようだった。
懐かしい森の道は、木々の騒めきと山鳥の声に溢れている。
戻り道に、二人ならんだ道祖神が日差しににこやかにいた。
ふもとに下る道の向こう、紅がきわ立つ子安塔を望むと清水への道は早くなった。
一輪の白椿が、春を拒むように咲いている。
本堂の木組みを見上げ、人の匠に声もない。
いつしか道は、雑踏に埋もれる。
茶わん坂を下り、季節外れの浴衣のひとは異国の春を迎えに来たのか。
美しくあるを望むは、ひとの性 ひとの夢
いまだ早い夏の彩を追いながら
物売りの喧騒をくぐり
私は街へ沈んだ。
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<スタッフ後記>
人がいないお寺の空気は、独特ですよね。
ゆっくりと心が落ち着いてくるように感じます。