寒の戻りか、今日は襟を立てる霧雨が降る。

昨日まで初夏を思わせる日差しが続き、芽吹きの季節に浮き立っていた。

路傍に紫の花が咲いていた。

一つは足下の駐車場のアスファルトを割り茎の碧も濃く小さな紫の花をつけている。

さらに、その先の竹垣には隠れるように優しい紫の花がのぞいていた。

春の花ではあるが、咲く姿が果てしなく違う。

それぞれの置かれた場所で意思を持ち咲いている。

ここで咲くことの意味などありはしない。

ただ咲き誇ることだけが生きることなのだ。

霧雨にぬれる夜、紫の花を振り返りそう思った。

 

明日には蒼空に広がった春が、やって来るのだ。

 

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＜スタッフ後記＞

道端のきれいな花に目線を落とす。

小さい頃には出来ていたことを、最近は出来ていないのではないと気づかされました。