ムンク展<事務所代表 森のfacebookより転載>
※事務所代表 森のfacebookより転載
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先日、東京都立美術館「ムンク展」を参観した。
年が明けて、底が抜けた冬の青空が広がっている。日差しは引き締まる寒さに透明のベールで覆っているようだった。
ムンクという画家を正面に観たのは初めてである。かの有名な「叫び」は見知ってはいた。
赤い雲が渦を巻き叫びを飲み込んでいる姿は、心の底に沈んだ澱を巻き上げそこに立ち止まざるを得なかった。
「自画像」黒い闇の中から焦点の虚ろな眼差しが浮かび上がっている。ムンクは何を見ていたのだろうか。
「病める少女1」赤とブルーグレーの細線で浮かび上がった少女の頬は痩せ細り、視線も虚ろに輝きも消えている。悲しみの虚無だけが彼女を包んでいる。
「庭のリンゴの樹」「自画像・時計とベッドの間」晩年の作品は奔放な色使いに変わり、ゴッホやマチスのような歓喜に満ちた印象の作品になっていた。だが、私には言いようのない不安と虚無が作品の背後にあるように感じられてならなかった。
閉館時間の夕暮れ時、美術館前の広場では空の瑠璃色が深みを増し紺碧に沈みかけていた。
地平から登る下弦の月が今は一人、輝いていた。
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<スタッフ後記>
この展示、私の友人も多く訪れているようでした。
やはり「叫び」に代表されるムンクの名は大衆の興味をひくのでしょう。
ですが、それ以外の作品からも何とも言えない迫力を感じます。