東山魁夷・雑感<事務所代表 森のfacebookより転載>
※事務所代表 森のfacebookより転載
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既に先月になってしまったが、生誕110年記念東山魁夷展を参観した。
国立新美術館では、空は高く木々は秋をまとい始めたばかりだった。
東山魁夷という画家は特別な存在である。
19才の頃、図書館で見つけた画集に「道」と題した作品を見つけた。真直ぐな道に青々と若草に導か小石の道がある。その向こうに続く道は右に折れ隠れてはいたが、遥かに続く気配があった。
なんとも懐かしい空気を感じていた。
その名前を古書店で見つけた。
画文集「我が遍歴の山河」である。
当時、私はアルチュール・ランボーやボードレールなどに熱狂しシュールレアリスムに漂っていた。図書館に潜り込み手当たり次第に本を抱えて読みふけっていた。
貧乏学生の私が図書館にない本を買い込んだのは、この「道」という作品が私を引き付けてやまなかったからだった。
画文集は東山がドイツに留学し、ヨーロッパを周遊し日本で画家として活動を始めた頃までを綴っている。画家が見たヨーロッパの街や美術館など、光に溢れた世界が広がっていた。
パリの詩人たちの熱狂とは違う、自らが今歩く世界を東山魁夷は見せてくれたのだった。
だが、当時の私にはその眩しい青々とした雑草の活きれにあふれた姿が、自らを映す鏡だったことに気づいてはいなかった。
-続く-
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<スタッフ後記>
画文集。今の時代なかなか出会えない負に気を感じます。
平成より昔の作品に、神秘的な作家性や作品のなんとも言えない気品のようなものを感じるのは私だけでしょうか。
上手く言語化できない魅力が、現代よりも昔の作品には多い気がします。