つむぎプロジェクト Vol.8
「つむぎプロジェクト」 Vol.8
【安部龍太郎の和服制作・染め機を織る】
機締をして筵の状態にしたものを染色
現在、木綿糸をほどいています。
本場大島紬では殿方が木綿糸の部分をびりびりと引き裂き
それはそれは早い工程なのですが、私はそれが出来ない為に
ちまちまと木綿糸をほどいております。
ほどいている様子はまた後日、動画にて投稿致します。
この、ちまちまとした作業をしながら
つくづく自分は細かい絣が好きなのだなぁ、と全身で実感します。
時折、ふふ。と一人で笑みをこぼしております。
本当は、もっと頻繁に細かい絣をしたいのですが
どうしても作業時間の都合上、単価が高くなってしまい
只でさえ手を伸ばしづらい価格帯から更に遠のく現実に
需要が余り無い為、制作することが叶いません。
本当は、いかに効率良く作品を作り、供給出来るようにするかなのです。
けれどそれは私が歩んでいける世界ではありません。
そう思うところで、なんとする。いうお話ですが
なんとか自身と折り合いをつけ
いにしえに学びながら
絶対に効率優先ではなく
芸術のクオリティとして、最低ラインを守り
なんとか細かい絣も制作していきたいのです。
自身の意にそぐわないものを制作出来ないのなら
自身の意にそぐうものの手を、工夫して広げていくしか道はないのだと思います。
絣、機締めの工程に入りました。
先にドラム整経した本番絣用の経糸を緯糸として入れ、経糸に張った木綿糸で防染
隙間のある空羽(あきは)と呼ばれる部分のみ染色されます。
今回の工程で、計算すると59,778箇所の絣を作ることになります。
(ほぼ独学なので、本場大島紬などで必須の技法、締機とは若干様相が異なります。
また、本来は殿方の力仕事なので筬框に鉛を付けています。)
一番の課題は、打ち込み。
元々殿方の仕事なのですから、力が足りないことは重々承知の上で
満身の力でとにかく打ち込みます。
そして気をつけるべきは、端の部分。
空羽と同じ長さになるように調整しなければ
絣の大小が出来てしまいます。
また、密度のある木綿経糸の開口を一度しっかりしなければ
様々な不具合が生じてきますので
考えた末、私はまず二尺差しで筬を痛めないように優しく開口します。
端の部分の影響が少ないよう、なるべく絣を均一に沢山作りたいので
筬は目一杯幅を使用することも大切です。
【Facebook 祈織-inori- @SAYAKAWATANABE.INORI 】
-事務所代表 森- コメント
細かな根気が必要な作業に感心します。
気が遠くなる作業の末に、美しい着物があるのですね。動画を楽しみにお待ちします。