つむぎプロジェクト Vol.7
「つむぎプロジェクト」 Vol.7
【安部龍太郎の和服制作・染め機を織る】
絣、機締めの工程に入りました。
先にドラム整経した本番絣用の経糸を緯糸として入れ、経糸に張った木綿糸で防染
隙間のある空羽(あきは)と呼ばれる部分のみ染色されます。
今回の工程で、計算すると59,778箇所の絣を作ることになります。
(ほぼ独学なので、本場大島紬などで必須の技法、締機とは若干様相が異なります。
また、本来は殿方の力仕事なので筬框に鉛を付けています。)
.
一番の課題は、打ち込み。
元々殿方の仕事なのですから、力が足りないことは重々承知の上で
満身の力でとにかく打ち込みます。
そして気をつけるべきは、端の部分。
空羽と同じ長さになるように調整しなければ
絣の大小が出来てしまいます。
また、密度のある木綿経糸の開口を一度しっかりしなければ
様々な不具合が生じてきますので
考えた末、私はまず二尺差しで筬を痛めないように優しく開口します。
端の部分の影響が少ないよう、なるべく絣を均一に沢山作りたいので
筬は目一杯幅を使用することも大切です。
.
その為、今回の機は幅広のもので
以前、高齢のために染織をやめられた元生徒さんに
御好意で譲渡頂きました。
実はその時点では幅広のものを織る予定もなく
スペースもギリギリで大変悩みましたが
その方の「是非あなたに使って欲しい」という熱意に押される形で
愛知は一色町まで足を運んだことを、懐かしく思い出します。
今はもうなくてはならない家族の一員のように
もう一台の機と共に、我が家に鎮座しております。
.
機というのは、使われなければ厄介な大荷物として廃棄されることが殆どです。
しかし一方で、桜や松、栗といった頑丈な木を長年寝かせて作られる機はとても高額で
またかなりのスペースを必要とし、My機というのは染織をするものにとって憧れなのです。
私は有難いことに早い段階で機を頂き、また今回の機にも御縁を結んで頂いて
本当に、願っても無いとても貴重なことでした。
なんといっても、一生を共にするものなのです。
染織を始めた頃から、機の上で死にたい。
そうなれたら本望だと
狭量な世界かもしれませんが
望んだことを全うできるように、精進したいと思います。
【Facebook 祈織-inori- @SAYAKAWATANABE.INORI 】
-事務所代表 森- コメント
人と一体化する、機(はた)とういう存在が大きいですね。