川井郁子コンサート
※事務所代表 森のfacebookより転載
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2月23日
「川井郁子コンサート2018 LUNA~千年の恋かたり~」参観した。
渋谷Bunkamuraオーチャードホールで開催されたコンサートツアーファイナルへの参観は、直前まで安部も予定し執筆スケージュールを調整していたのだが、京都の仕事場から戻れないと前日の朝、連絡があった。楽しみにしていたコンサートだっただけに、木で鼻をくくったような連絡である。さて、空いた席をどうするか困惑した。
執筆しているのはS社への掲載作品である。安部に担当のI女史へ代理参観を聞いてみてくれと頼んだ。ペナルティー代わりの参加依頼ではあったのだが、申し訳なさそうそうに喜ぶS女史の様子に、天を見上げる友人の顔が浮かび思わず苦笑した。
早めに渋谷Bunkamuraへ着くと界隈を散策し、ホール一階の花屋のショーウインドに目を引かれた。
指定の椅子に座り振り返れば三階席までざわめいている。
暗転した会場が静まり、舞台奥に組みあげられた鐘楼に月がのぼりミューズがたたずむ。抱えたバイオリンが静かに音を零し始めると、ホールを埋める椅子の隙間を太鼓の響きと共に微かに流れる。紅く染まる月の情念が客席を静かに満たし、そして紅く香るバイオリンは、芳醇な揺蕩いを切り裂く遥か彼方の声に月の世界へ会場はひき込まれていく。
ミューズに焦がれるルジマコフが扮する男は、引き締まった肢体を指先まで張りつめ恋の炎を掲げる。
ミューズの囁き、闇夜の篝火に焦がれるままに男は舞つのる。
舞台は「源氏がたり」に変わる。桜の花が舞う春の女人のため息が風と共に舞い上がり、そして時を経て悲しく散り色を変える。刻を失い恋の色がかすむ哀しみは、女人に屍の面を被らせる。恋の思いの悲しさに月は輝きを失ってゆく。
かつて掌にあふれていた恋の香りと悲哀をこのバイオリンの囁きは、私の鼻腔の奥によみがえらせた。
滴るような紅い薔薇と弾ける初々しい黄色の薔薇がコンサートのフィナーレに重なっていた。
コンサート終了後の打ち上げに参加し、S女史に川井さんとの写真を強引に依頼した。
川井さんの笑顔に観念し、私の表情は何処かへ飛んでしまった。目や頬が赤らみ腫れているのは、ついに発症した花粉症による事だけは申し開きさせていただく。
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【スタッフ後記】
安部も不本意な欠席だったと思います。
是非、今後機会のあった方は公演へ足を運んでいただければと思います。