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東京国立博物館 「運慶展」

Date:2017/11/06

※事務所代表 森のfacebookより転載

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11月3日 

只々、圧倒された。

今週、東京国立博物館で開催されている「運慶展」を参観した。

東大寺南大門金剛力士(仁王)像の仏師の名は知っていた。

今回、興味を持ったのは、奈良・東大寺俊乗堂 「俊乗上人(俊乗房重源)坐像」の写真だった。

首をひょいと突き出し、不機嫌そうな口元と半眼の視線を遥か彼方へ放り投げていた。

そんな仏などあるものか、そんな反発もあった。

会場で運慶の時代背景のパネルを読みようやく気が付いた。

平安時代から鎌倉時代へ大きく時代が変わる変革の時代のただなかに生きた仏師だった。

平安時代の貴族支配が武家平清盛そして、源頼朝・義経の鎌倉幕府へと変革し、個の意識が発芽した中世への入り口に運慶は立っていたのだ。

平安末期のふくよかな仏「大日如来坐像」から、荒々しい怒りと安寧を「金剛力士像」に写し、「八大童子立像」に見る個々の人間の存在を彫り上げて行った。

ついには、魂までも「俊乗房重源坐像」に座り込ませてしまっている。重源上人の前では、金剛力士でさえ色を失う。

時代が大きな変革を迎え抑圧された武家が個を意識し始めた時代、運慶は人間の姿に仏の慈悲を、そして怒りと安寧を彫り上げていた。大勢の参観者が私の前を通り過ぎて行った。

私は重源上人の前に立ち尽くしていた。

一度、重源上人坐像の側に立たれることをお勧めしたい。魂を振りかえる良い機会となるかに思う。

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【スタッフ後記】

本当にこれが木から彫られたものなのか?と思わず疑いたくなるほどの存在感と完成度。

現代ほど機械も知識も一般化されていなかった時代に、これだけの作品が作られていたという事実にはいつも驚かされまます。

物を作り。それを遺すというのはどのような気持ちなのか。と、ふと考えてしまいました。