日曜美術館 / 海の幸
※事務所代表 森のfacebookより転載
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7月25日 雑事に追われて「日曜美術館」をようやく視聴した。
今回は「魂こがして 青木繁~海を越えた“海の幸”と石橋凌の対話」と題し、石橋凌さんがフランス・オランジェリー美術館へ訪れた。
まったく私の不明だったのだが、石橋さんが福岡・久留米のご出身だと初めて聞いた。
久留米の裏町、池町川沿いのジャズ喫茶などが紹介されていた。
学生時代の安部や私が彷徨っていた頃、この辺りの歓楽街を一本裏側に入つた個性的な、そして怪しげなお店が並んでいた。
石橋さんが青木繁の「海の幸」を初めて知ったのは、久留米市民会館の舞台緞帳だったそうである。
舞台幅いっぱいに広がった「海の幸」が私の記憶にもあった。
そして、この会館の記憶は学生時代の文化祭で安部がギターを抱え井上陽水の「傘がない」を歌い「氷の世界」を舞台いっぱいに叫んでいる姿であった。
まだ、文芸部を立ち上げる前、狂おしい魂の炎上に安部はグランドで汗に昇華し池町川沿いで飲み明かし、私は汗に流すことも飲み明かすこともできず、ただ夜が明けるまで野良猫のように歩き続けていた。
池町川沿いの細い路地ですれ違っていた石橋凌さんを久留米市民会館と共にテレビ画面に見るとは想像もできなかった。
懐かしいと単純に語れない久留米市民会館が解体されると聞き、寂しさを禁じ得ない。
「海の幸」漁民たちの行進の奥にいた白表の恋人の顔が、青春の扉を開けたばかりの私の瞼に残っていた。
日曜美術館「魂こがして 青木繁~海を越えた“海の幸”と石橋凌の対話~」
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【スタッフ後記】
学生時代の思い出の土地を目にすると、なんとも言い難い思いがこみあげてきますよね。
最近は古い建物はどんどん取り壊されていき、地元に帰ってみると見知った光景が何もないということも珍しくありません。
文章や映像を頼りに地元を思い出すことの必要性を考えさせられました。