ジャコメッティ展
※事務所代表 森のfacebookより転載
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先日、ジャコメッティ展が開催されたと聞き六本木の国立新美術館へ向かった。
川井郁子氏が書き下ろした新曲『流星』がテーマ曲に決定されたとご案内もあった。
私のジャコメッティとの出会いは、初めてニューヨークへ飛び出しMoMAニューヨーク近代美術館へ行った時、笑ってしまうがアートショップのポストカードだった。
いかにも細く立ちすくんでいる人物や骨ばかりのうらぶれた犬の写真だ。
他の誰の彫刻とも違いながら確かに存在を主張する写真だけが記憶に残っていた。
今回初めて実物を目の前にして、彫刻のサイズがとてつもなく小さな小指ほどの人物像から、見上げるほど大きな立像まで混沌とした作品群が、居る事そして在る事を同じように主張する。異次元へ踏み込んでしまったかの様な手の届かない、遠近を失った空間を醸しだしている。
キュビズムやシュルレアリスムなどの近代芸術運動に参加し、ブルトンやサルトルなどと交流もあったと聞く。
ジャコメッティの作品は概念や思考をも剥ぎ取り、存在の本質だけを粘土の中に残しているかのようだった。
図録の中にパリ・モンマルトルの小さなアトリエの写真があった。
そして、モンマルトルのカフェのテーブルで当時の新聞紙に素描を書き込むジャコメッティの姿が、あの細く端然と立ち尽くす立像に重なっていく。
普段は展示会の音声ガイドを借りず自由気ままに作品を散策するのだが、今回は川井郁子さんの新曲「流星」が聞けるので、速水もこみちさんの解説と共に館内を歩いた。
「流星」はジャコメッティに似合っていた。
又、来年1月には「Final Portrait・最後の肖像」と題した映画が公開されるそうだ。行かずばなるまい。
2時間ほど展示会場を彷徨よい空腹に追われ、併設のレストランでバケットとコーヒーを買い込みウッドデッキのテラスで遅い昼食をと鞄を置いた。
その時、雀が私を置き去りにしてバケットをついばみ始めた。
雀は逃げるものと決め込んだ私が悪いのではあるが、梅雨の晴れ間に右頬の口角を少しばかり上げ、思わずオイ!と声を上げてしまった。
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【スタッフ後記】
都会の雀は人に慣れているのでかなり堂々としていますね。
執筆により多忙を極める安部と、芸術鑑賞に勤しむ森との対比がとても面白いです。
この二人が合わさることで、また新しい気づきが生まれるのだと思います。