コシノHKギャラリー・ゲルニカ / 『セピア色のヨーロッパ・3』
※事務所代表 森のfacebookより転載
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今年初めNHK日曜美術館で安部がご一緒させていただいた、コシノヒロコ様から個展のお知らせをいただいた。
放送でも「墨」に拘ったドレスを発表され、柔らかな生地へ一閃の墨を走らせた大胆なコシノ流の煌きにあふれていた。
今回の個展は「墨の瞬・すみのとき」と題され、日本の「和」の心を表す器の新たな提案であった。
石川県白山市において透明性が高く純白の器を製造するニッコー㈱とコラボレーションでの展開との事。
コシノ先生の原画をもとにシンプルで大胆な墨を走らせた器が、純白のギャラリーに存在を主張していた。
中でも私がときめいたのは、壁の間にひっそりと飾られた一枚の原画だった。
和紙と綺羅のごとく輝く背景に勢いをつけて墨の飛沫が彼方へ向かっていく。
コシノ先生の溢れんばかりのエネルギーを感じさせる作品であった。
「セピア色のヨーロッパ・3」
翌朝、プラド美術館へ向かった。
覚えているのは、既に12月も中旬ではあったがコートなど羽織ることもなく黒いリュックを肩に下げ、はだかの街路樹を歩いて行った。
プラドへ入った初日の記憶は、ゲルニカ、ゲルニカ、そしてゲルニカである。
とてつもなく大きなキャンバスにモノトーンの悲鳴、恐怖、怒り、そして悲しみ。
阿鼻叫喚という単純な言葉など吹き飛ばすような嵐が目の前にあった。
ピカソのすさまじい感情があふれていた。日本でもスペイン内戦の記録番組を見ている。
ドイツのユンカース急降下爆撃機の悲鳴のような音が耳に残ってもいた。
近代戦から現代戦への無差別爆撃という象徴でもあると聞いてもいた。
キャンバスに描かれたモノトーンの作品が、心を打ち震わせ圧倒し時を忘れさせた。
調べてみると、当時は既にソフィア王妃芸術センターで展示されていたと記録にはある。
だが、私の記憶の風景には「ゲルニカ」に魅入られ時が止まった落葉の街路樹が浮かぶばかりである。
思い出しつつ・続く
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【スタッフ後記】
『墨』の力強さは、小学生の習字の時間にイヤというほど味わいましたが、
その力強さを芸術と結び付けられているコシノ先生の作品には、感動を覚えます。
記事内にあるコシノ先生のHPのデザインにも驚かされました。必見です。