ルドン・グランブーケ再訪 <事務所代表 森のfacebookより転載>
※事務所代表 森のfacebookより転載
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4月26日
-ルドン・グランブーケ再訪-
先週、安部が中国シルクロード取材へ出かけ不在の合間に、時間を見つけルドンのグランブーケに会いに行った。
学生時代にアルバイトで買ったボードレール「惡の華」を書棚から取り出した。
19才の頃、学校の研修旅行で東京を初めて訪れた。アルバイトで貯めた僅かな小遣いを手にし、とにもかくにも憧れの神保町書店街へ出かける。
終日歩き回って購入したのは、西城八十「アルチュールランボー研究」「西脇順三郎詩論集」や福永武彦訳「惡の華」など田舎では手に入らない本ばかりだった。
ルドンが描いた黒のスケッチそのままのボードレールやランボーが何時も私の側にいた。
だが、就職し上京して暫くすると都会の喧騒の中に私の詩人たちは姿を消してしまった。
それから遠く、還暦をいくらか過ぎた今年になって、ルドンの咲かせた花束と共に私の詩人たちが戻ってきた。
ボードレールが切り裂いた暗黒の地底にのたうつ惡の華とランボーが見た永遠の、その先にルドンは花園の世界を見たのかもしれない。
グランブーケに影はない。
グランブーケが放つ輝きの裏側にこそ陰はあり、その暗黒にこそ輝きの根源があるのだと、今になって詩人たちがささやいた。
早朝のアッシジに霧が消えかけた頃、オーベルジュの裏庭で出会った青いドレスの少女との恋の話は、諸般の事情により割愛させて頂く。
ただ、彼女の青いドレスがシルクの輝きに満ちていた事だけは確かであった。
5月20日まで 三菱一号館美術館
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【スタッフ後記】
浅学な私としましては、ボードレールの『悪の華』は同名のマンガ・アニメにて少し内容をかじった程度になります。
世代のせいにするつもりはないですが、世間的に「若者」と呼ばれる世代の者たちが、海外文学や古典などを敬遠しがちなのは、なぜなのでしょうか。
内容が難解というのももちろんでしょうが、書を読むという慣習が本当に薄れていっていると感じます。