亀戸コンサート / 立ち姿
※事務所代表 森のfacebookより転載
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亀戸コンサートと「立ち姿」一考
7月2日 私用が延期になり、気になっていた渡辺克也からのコンサートへ急遽向かった。
本来、先週の日曜日に安部も一緒に参観するつもりであったのだが、原稿用紙の束が埋まらず延期とした。
安部は以前渡辺さんのコンサートを視聴したそうで、オーボエなる楽器の音さえ知らない私に一度聞いてみればわかると言っていた。
演奏も良いのだが立ち姿がこれも見事だという。今回はクラシック未経験ではあるが一人で行くことにした。
コンサート会場が亀戸駅の側だと聞いたので、まだ訪れたことがない亀戸天神へ立ち寄った。
日曜日でもありお参りの人とともに、スカイツリーを遠望する撮影ポイントなのかカメラを構える人が多かった。
亀戸天神から会場へ向かう途中、大通りでは車を遮断してお祭りなのか大道芸を見る人の輪がいくつもできていた。
コンサートは初心者の私にやさしい耳にしたことがある楽曲を演奏されていた。
ロシアから来援されたバリトンのヴィタリ・シュマノフさんが唱歌や民謡など日本語で歌われ異国の香りがするなんとも懐かしい風景が広がっていった。
オーボエという楽器を渡辺さんの演奏で初めて注目したのだが、曲名を覚えるにも馴染みがなく右から左へ消えていくなかで、渡辺さんご本人が言われていたのだが、やたら音の数が多く効率の悪いテンポの速い曲が耳に残った。
ピアノの中村由利子さんやチェロの植草ひろみさんらと交えた多彩な楽曲は、初心者の私も楽しめる演奏会であった。
雑感ながら、ここの所「立ち姿」という言葉が気になっている。
先回の「ダ・ヴィンチとミケランジェロ」に出演されていた中井貴一さんが、イタリアブランドのスーツに袖を通した瞬間。
川井郁子さんがバイオリン弾きながら天を見上げる姿。
そう、先日見た友人が作った赤のコサージュを胸にして金屏風の前に立つ仲代達也さんの写真。
今回のコンサート出演者それぞれが、時折みせる瞬間の輝き。
そして、安部も普段見ることがない輝きを講演会場に見ることがある。
人の所作を含めて、そこに居るその輝きを感じることが最近多くなってきた。
私が中学生だったころ、父の務める会社でアルバイトしたことがある。
その当時は意識もしていなかったが、最近頻繁に父が旋盤の前で削りたてのシャフト棒を爪で撫でていた姿が輝きなが鮮明に浮かんでくる。
「爪じゃないと本当のところはわからんぞ」そう父は言っていた。
若い同僚の工員さんに「あのシャフトを削れるのは親父さんしかいないよ」そう言われて誇らしく感じていた。
旋盤の前に立つ父の姿や、人それぞれが見せる瞬間の輝きが何処から来るのか気になっている。
なにか、少し解放された自分がいるのかもしれない。
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【スタッフ後記】
ここ最近は、安部が原稿に追われている様子をよくお伝えしています。
新聞連載だけでも相当の労力が必要とされそうですが、それに加えて講演や他の原稿まで。
作家というものの大変さと、安部の体力にただただ感服している毎日です。