河口湖の驟り雨「山内若菜展・風光」を訪ねて<事務所代表 森のfacebookより転載>
※事務所代表 森のfacebookより転載
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先頃、ご縁があって銀座のギャラリーで知り合った画家の山内氏の個展会場「河口湖ミューズ館」へご一緒した。
「風光 2014-2019」と題した近年の集大成というべき展示会である。
東北大震災そして福島の悲劇をモチーフとしたであろう大作が、壁面を被っていた。
会場は恐怖と怒りにあふれ、哀しみと放心とが霞むように沈んでいる。画面に暴れ込む牛や馬が狂奔し、大地は海が暴れ行方を失っていた。
苦しく哀しく心が凍っていくようだった。ここには未だ癒しや安らぎへの時間は止まったままだ。だが、人々は此処に留まってはいられない。
悲しみや恐怖は、時間という酵母によってほろ苦い哀しみへと発酵してゆく。
哀しくそして懐かしい遠景にしてゆくのだと思っている。
令和元年という時代、画家・山内若菜氏の新たな世界に期待している。
若いころ何度か訪れた河口湖ではあるが、ほとんど記憶に残ってはいない。
夏の日差しに雲影は走り過ぎ、湖面から上り立つ尾根を越えていく。
湖畔の歩道から東屋が緑の岬に孤独に座っていた。
走り去る風に振り返えると、夏が湖面に跳ねる遥か向こうの山影に、驟り雨が音もなく霞んでいた。
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<スタッフ後記>
震災にみまわれ今なお苦しみや恐怖に苛まれている被災者の方々の心のなかで、東北大震災という辛く悲しい「災害」がいつか、哀しくも懐かしい「思い出」へと変わっていく日を願っている。山内氏の作品からは、そんなメッセージが伝わってくるようです。